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49.宿木(やどりぎ)

ヤドリギは<ヤドリギ科の常緑小低木。エノキ・桜など落葉樹の樹上に寄生し、高さ約50センチ。茎は緑色で、二また状によく分枝し、球状になる。>と大辞泉にあり、幾つかの観察サイトなどにも冬に落葉した宿主木の枝に青く残るヤドリギは印象的だという記事が画像と共にアップされていた。光合成で糖分は自給出来るらしいが、水分や他の養分は宿主から横取りするわけで、私は寄生という生存形態に何処か疚しさを覚えるが、不思議な生命力という見方もあるらしい。尤も、宿主木にしても、空気や太陽光や土中から養分を得ているのだから、自給と言っても所詮は他物の有効利用であり、物質にしてみれば何れ多様な形態変化の一局面に過ぎず、様相が変化し続ける事をヒトは時間と認識しているのだとすれば、生命体の根源的な意志が何なのか、いや、そも物質の根源的な意味が何なのか、などという問いに意味が有るのかどうかさえ分からないが、その揺るぎ無い現存形態と、同時にその寄って立つ所の頼り無さという紛れも無い現実を体現しているという点に於いては、確かにヤドリギは見事な生き様なのかも知れない。この帖は、薫君の中、大納言時代*二十四歳夏から二十六歳夏四月頃までの物語。 *私見では、二十五歳夏から二十七歳夏、かと思う。

[主要登場人物]

01.<かおる>、光君の子25、中納言源朝臣・中納言朝臣・源中納言・中納言・中納言の君・権大納言・右大将・大将殿・大将の君。

02.匂宮<におうのみや>、今上帝の第三親王26、兵部卿宮・宮・三の宮。

03.今上帝<きんじょうてい>、朱雀院の御子46、帝・内裏・主上。

04.明石中宮<あかしのちゅうぐう>、今上帝の后44、中宮・后・后の宮。

05.夕霧<ゆうぎり>、光君の長男、源氏殿51、右大臣・右大臣殿・右の大殿・大臣。

06.紅梅大納言<こうばいのだいなごん>、致仕大臣の二男、故柏木の弟57、按察使大納言・大納言・按察使。

07.女三の宮<おんなさんのみや>、薫の母46、母宮・尼宮・入道の宮。

08.麗景殿女御<れいけいでんのにょうご>、今上帝の女御、年齢未詳、藤壺・故左大臣殿の女御・女御・母女御。

09.女二の宮<おんなにのみや>、今上帝の第二内親王14、女宮・藤壺の宮。

10.六の君<ろくのきみ>、源氏殿の六姫、典侍腹の姫君、一条宮の養女、21、六の君・女君。

11.中君<なかのきみ>、八の宮の二女25、二条院の対の御方・兵部卿宮の北の方・宮の御方・対の御方・宮。

12.浮舟<うきふね>、故八宮の妾腹子19(但し登場時は20)、常陸前司殿の姫君。

13.弁尼君<べんのあまぎみ>、柏木の乳母の娘、60数歳、尼君・弁・老い人・朽木。

 

第一章 薫と匂宮の物語 女二の宮や六の君との結婚話

[第一段 藤壺女御と女二の宮]

[第二段 藤壺女御の死去と女二の宮の将来]

[第三段 帝、女二の宮を薫に降嫁させようと考える]

[第四段 帝、女二の宮や薫と碁を打つ]

[第五段 夕霧、匂宮を六の君の婿にと願う]

 

第二章 中君の物語 中君の不安な思いと薫の同情

[第一段 匂宮の婚約と中君の不安な心境]

[第二段 中君、匂宮の子を懐妊]

[第三段 薫、中君に同情しつつ恋慕す]

[第四段 薫、亡き大君を追憶す]

[第五段 薫、二条院の中君を訪問]

[第六段 薫、中君と語らう]

[第七段 薫、源氏の死を語り、亡き大君を追憶]

[第八段 薫と中君の故里の宇治を思う]

[第九段 薫、二条院を退出して帰宅]

 

第三章 中君の物語 匂宮と六の君の婚儀

[第一段 匂宮と六の君の婚儀]

[第二段 中君の不安な心境]

[第三段 匂宮、六の君に後朝の文を書く]

[第四段 匂宮、中君を慰める]

[第五段 後朝の使者と中君の諦観]

[第六段 匂宮と六の君の結婚第二夜]

[第七段 匂宮と六の君の結婚第三夜の宴]

 

第四章 薫の物語 中君に同情しながら恋慕の情高まる

[第一段 薫、匂宮の結婚につけわが身を顧みる]

[第二段 薫と按察使の君、匂宮と六の君]

[第三段 中君と薫、手紙を書き交す]

[第四段 薫、中君を訪問して慰める]

[第五段 中君、薫に宇治への同行を願う]

[第六段 薫、中君に迫る]

[第七段 薫、自制して退出する]

 

五章 中君の物語 中君、薫の後見に感謝しつつも苦悩す

[第一段 翌朝、薫、中君に手紙を書く]

[第二段 匂宮、帰邸して、薫の移り香に不審を抱く]

[第三段 匂宮、中君の素晴しさを改めて認識]

[第四段 薫、中君に衣料を贈る]

[第五段 薫、中君をよく後見す]

[第六段 薫と中君の、それぞれの苦悩]

 

第六章 薫の物語 中君から異母妹の浮舟の存在を聞く

[第一段 薫、二条院の中君を訪問]

[第二段 薫、亡き大君追慕の情を訴える]

[第三段 薫、故大君に似た人形を望む]

[第四段 中君、異母妹の浮舟を語る]

[第五段 薫、なお中君を恋慕す]

 

第七章 薫の物語 宇治を訪問して弁の尼から浮舟の詳細について聞く

[第一段 九月二十日過ぎ、薫、宇治を訪れる]

[第二段 薫、宇治の阿闍梨と面談す]

[第三段 薫、弁の尼と語る]

[第四段 薫、浮舟の件を弁の尼に尋ねる]

[第五段 薫、二条院の中君に宇治訪問の報告]

[第六段 匂宮、中君の前で琵琶を弾く]

[第七段 夕霧、匂宮を強引に六条院へ迎え取る]

 

第八章 薫の物語 女二の宮、薫の三条宮邸に降嫁

[第一段 新年、薫権大納言兼右大将に昇進]

[第二段 中君に男子誕生]

[第三段 二月二十日過ぎ、女二の宮、薫に降嫁す]

[第四段 中君の男御子、五十日の祝い]

[第五段 薫、中君の若君を見る]

[第六段 藤壺にて藤の花の宴催される]

[第七段 女二の宮、三条宮邸に渡御す]

 

第九章 薫の物語 宇治で浮舟に出逢う

[第一段 四月二十日過ぎ、薫、宇治で浮舟に邂逅]

[第二段 薫、浮舟を垣間見る]

[第三段 浮舟、弁の尼と対面]

[第四段 薫、弁の尼に仲立を依頼]

 

 

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