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47.総角(あげまき)

「総角」と書いて「あげまき」と読むのは、音読みにも訓読みにも則っていないから、当て字ということだ。ところで、「あげまき」の意味だが、是は<古代の少年の髪形。頭髪を中央から二分し、耳の上で輪の形に束ね、二本の角のように結ったもの。また、その髪形の少年。角髪(つのがみ)>と大辞林にあり、髪を上げて巻いた、という整髪方法自体を示す言い方であるらしい。「角髪」は「みづら」とも言うが、それも形状から来る言い方なのだろう。だから髪型のことなら、「角髪」と書いて「あげまき」と読ませるのは、「揚巻」と書くより分かり易いのかも知れない。が、「角髪」を「総角」という表記に変えたのでは、肝心の「髪」が抜けてしまっている。と、此処で何故か朝鮮語の「チョンガー」が出てくる。尤も、大陸文化の大半は朝鮮経由で日本に渡来した時期が多かったようで、何故かとは言ったものの日本語に朝鮮語の影響があることは普通だが、「チョンガー」は壮年の独身男を揶揄した言い方らしく、それを<子供みたいだ=角髪だ=アゲマキだ>と誰かが和訳した、らしい。そして、「チョンガー」の漢字表記が「総角」であることから、ついに<総角=アゲマキ>という定式が成立した、とか。尤も、是も定説ではなく、一説とのこと。そして、このアゲマキという髪型に似ることから来た名称のようだが、紐の飾り結びの一つに「揚巻結び」というものがあって、それは<ひもの結び方の一。輪を左右に出し、中を石畳(いしだたみ)に結び、房を垂らす。文箱(ふばこ)や御簾(みす)などの飾りに使う。>と大辞泉にある。さて、どういう糸がどう絡むのか。この帖は、薫君の中納言時代二十四歳秋から歳末までの物語。

[主要登場人物]

01.<かおる>、光君の子24、中納言・中納言殿・中納言の君・客人・殿・君。

02.匂宮<におうのみや>、今上帝の第三親王25、兵部卿宮・宮・男。

03.今上帝<きんじょうてい>、朱雀院の御子45、帝・主上・内裏。

04.大君<おおいきみ>、八の宮の長女26、姉宮・姫宮・姫君・女君。

05.中君<なかのきみ>、八の宮の二女24、中の宮・宮・女君・御方・山里人。

06.明石中宮<あかしのちゅうぐう>、匂宮の母、今上帝の后43、后宮・中宮・大宮・后。

 

第一章 大君の物語 薫と大君の実事なき暁の別れ

[第一段 秋、八の宮の一周忌の準備]

[第二段 薫、大君に恋心を訴える]

[第三段 薫、弁を呼び出して語る]

[第四段 薫、弁を呼び出して語る(続き)]

[第五段 薫、大君の寝所に迫る]

[第六段 薫、大君をかき口説く]

[第七段 実事なく朝を迎える]

[第八段 大君、妹の中の君を薫にと思う]

 

第二章 大君の物語 大君、中の君を残して逃れる

[第一段 一周忌終り、薫、宇治を訪問]

[第二段 大君、妹の中の君に薫を勧める]

[第三段 薫は帰らず、大君、苦悩す]

[第四段 大君、弁と相談する]

[第五段 大君、中の君を残して逃れる]

[第六段 薫、相手を中の君と知る]

[第七段 翌朝、それぞれの思い]

[第八段 薫と大君、和歌を詠み交す]

 

第三章 中の君の物語 中の君と匂宮との結婚

[第一段 薫、匂宮を訪問]

[第二段 彼岸の果ての日、薫、匂宮を宇治に伴う]

[第三段 薫、中の君を匂宮にと企む]

[第四段 薫、大君の寝所に迫る]

[第五段 薫、再び実事なく夜を明かす]

[第六段 匂宮、中の君へ後朝の文を書く]

[第七段 匂宮と中の君、結婚第二夜]

[第八段 匂宮と中の君、結婚第三夜]

 

第四章 中の君の物語 匂宮と中の君、朝ぼらけの宇治川を見る

[第一段 明石中宮、匂宮の外出を諌める]

[第二段 薫、明石中宮に対面]

[第三段 女房たちと大君の思い]

[第四段 匂宮と中の君、朝ぼらけの宇治川を見る]

[第五段 匂宮と中の君和歌を詠み交して別れる]

[第六段 九月十日、薫と匂宮、宇治へ行く]

[第七段 薫、大君に対面、実事なく朝を迎える]

[第八段 匂宮、中の君を重んじる]

 

第五章 大君の物語 匂宮たちの紅葉狩り

[第一段 十月朔日頃、匂宮、宇治に紅葉狩り]

[第二段 一行、和歌を唱和する]

[第三段 大君と中の君の思い]

[第四段 大君の思い]

[第五段 匂宮の禁足、薫の後悔]

[第六段 時雨降る日、匂宮宇治の中の君を思う]

 

第六章 大君の物語 大君の病気と薫の看護

[第一段 薫、大君の病気を知る]

[第二段 大君、匂宮と六の君の婚約を知る]

[第三段 中の君、昼寝の夢から覚める]

[第四段 十月の晦、匂宮から手紙が届く]

[第五段 薫、大君を見舞う]

[第六段 薫、大君を看護する]

[第七段 阿闍梨、八の宮の夢を語る]

[第八段 豊明の夜、薫と大君、京を思う]

[第九段 薫、大君に寄り添う]

 

第七章 大君の物語 大君の死と薫の悲嘆

[第一段 大君、もの隠れゆくように死す]

[第二段 大君の火葬と薫の忌籠もり]

[第三段 七日毎の法事と薫の悲嘆]

[第四段 雪の降る日、薫、大君を思う]

[第五段 匂宮、雪の中、宇治へ弔問]

[第六段 匂宮と中の君、和歌を詠み交す]

[第七段 歳暮に薫、宇治から帰京]

 

 

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